台湾の半導体大手 熊本に新工場 悲願の誘致 なるか形勢逆転

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スマートフォン、自動車、ゲーム。今年は半導体不足で、こうした身近なものの生産量が減るというニュースが相次ぎました。背景には、日本が世界の半導体市場で大きく遅れをとっているという厳しい現実があります。そんな中、半導体の世界最大手である台湾企業が、ソニーグループと共に新工場を熊本県に建設すると発表しました。これで形勢逆転となるのでしょうか。

新工場ができる熊本県では、早くも期待の声が相次ぎました。

熊本銀行 野村俊巳頭取:
千載一遇のチャンスではなかろうかという気持ちでおります。

地元の男性:
すごいなぁと思いながら。ますます発展するんじゃないかと思いますけどね。

地元が興奮するのも無理はありません。日本国内で最先端となる半導体工場。新たに1500人以上の雇用が生まれるだけでなく、周辺環境も一気に整理されるのです。

萩生田光一経済産業大臣:
我が国のミッシングピース(欠落部分)を埋めるものであると認識しております。
率直に歓迎したいと思います。

半導体の受託生産で世界最大手のTSMCを日本に誘致するのは、経産省の悲願でした。
岸田政権は総投資額のおよそ半分、数千億円の補助金で全面支援する方針です。

麻生財務大臣(当時):
A(甘利)、A(安倍)、A(麻生)3人揃えばなんとなく”「政局」って顔だから。
これだけ普段、半導体に全く縁がないような顔した新聞記者がいっぱいここにおります。

5月に設立された自民党の半導体議連で、安倍元総理はこう話していました。

安倍晋三元総理大臣:
今までの産業政策でやってきた補助金もそうですが、その延長線上ではなくて、まさに“異次元”のものをやらなければいけない。

“異次元”の補助金。

岸田政権は当時の戦略を忠実に実行しているともいえます。

かつて1988年には50.3%のシェアを誇っていた日本の半導体産業は、2019年には10.0%のシェアしかなくなってしまいました。
その間、経産省が主導した国家プロジェクトは次々に失敗に終わり、「失われた30年」と言われています。

今、アメリカと中国の技術覇権争いが激しくなる中、半導体の安定供給が国の経済安全保障の観点から喫緊の課題となっているのです。
学術界でTSMCとのパイプ役となっているキーマンに、今回の工場誘致の意義を聞きました。

記者:
TSMCに数千億円の補助金を出す価値があるとお感じですか?

東京大学システムデザイン研究センター長 黒田忠広教授:
もちろん価値は十分にあると思います。iPhoneだったり、プレイステーションとか、最近だとテスラの自動運転の中にも使われてますし、データ駆動型の社会を築く非常に重要なところにたくさん使われるようになるでしょう。
その証拠に、世界の半導体市場は今後10年間で2020年の50兆円市場から2030年には100兆円市場になるという予測もあります。

ドイツやシンガポールなど様々な国がTSMCにオファーをしていました。日本に新工場が決まった瞬間の気持ちを黒田教授に聞くと・・・

東京大学システムデザイン研究センター長 黒田忠広教授:
待ってました。
あまり裏側をお話できることはないですけども、要因は長く続いた日本と台湾の2国間の良好な関係、アカデミアのチャネルが重要な役割を果たすということもあるんだろうと思います。

TSMCの研究開発のトップのフィリップ・ウォン教授と黒田教授は旧知の仲。

“技術は人”

人間関係が新工場の誘致にも影響を与えたと、経産省幹部も認めています。今後の課題は新工場をきっかけに日本が再び競争力を取り戻せるかです。

東京大学システムデザイン研究センター長 黒田忠広教授:
新工場の技術は、およそ10年前に先端だった技術なんですが、それでも国内では最先端技術になります。
これで終わっては何の意味もありません。この工場をいかにみんなでフルに稼働するか、いっぱいにするかというところが、第2、第3の矢として重要になるんだろうと思います。

“異次元”の巨額補助金で日本半導体の復活を狙う岸田政権。もう失敗は許されません。(11日21:28)

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