感染症の流行などの緊急時に新たに開発されたワクチンや薬などの速やかな実用化を目指す「改正医薬品医療機器法」が5月13日、参議院本会議で全会一致で可決、成立しました。
改正法には臨床試験の最終結果が出る前でも有効性があると推定されれば承認できる「緊急承認」制度を設けることが新たに盛り込まれました。この制度は新型コロナワクチンの実用化が欧米よりも遅れた反省を踏まえたものとなっています。
日本では遅れているものの“国産ワクチン”の開発は東京都も進めていて、このたび延期となった東京都の小池知事のクウェート訪問では開発の協力を求める考えでした。小池知事は13日の定例会見で「東京都医学研で長年、天然痘の株を活用したワクチン開発研究が続けられてきた。感染症対策という点でクウェート側も大変関心を示していて、直接意見交換に行く」と話していました。
東京都のワクチン開発を行う東京都医学総合研究所はこれまでに動物を使った実験で効果を確認していて、1回の接種で長期にわたって効果が持続することが期待されるということです。ただ、人への治験の時期は決まっておらず、早期の実用化を目指しています。
<緊急承認制度で何が変わる? 国産ワクチンの現状は?>
可決された「改正法」に盛り込まれたワクチンの「緊急承認制度」のポイントを改めて確認します。
制度は感染症の流行やテロなど「緊急時」にのみ適用されるもので、新開発のワクチンや治療薬の有効性が期待できる場合、臨床試験の結果が出る前でも承認されます。ただし承認には「他の代替手段がないこと」が条件となっています。また、安全性の確認は従来通りで、2年以内に有効性を確認できなければ承認の取り消しも行います。この緊急承認制度によって、ワクチン開発にさらなるスピード感が生まれることが期待されます。
また、国産ワクチン開発についても動きがありました。製薬大手の塩野義製薬は5月16日、12歳から19歳を対象とした臨床試験を開始しました。これは低年齢層への感染拡大に対応するためで、早ければ6月にも厚生労働省に承認申請を行うということです。
ワクチンの承認時期については、ファイザー製は2021年2月に、モデルナ製やアストラゼネカ製は2021年5月に薬事承認となったので、1年以上の遅れで国産ワクチンが誕生することになりそうです。
国産ワクチンについては東京都も開発を行っています。都の医学総合研究所では2020年度から新型コロナワクチンの開発を開始し、現在は動物を使った臨床試験で効果を確認したということです。接種1回で長期にわたって効果が持続することが期待されていて、小池知事はこのたび延期となったクウェート訪問でもこのワクチンの開発協力を進める考えを示しています。開発スピードの点で世界から遅れをとっている国産のワクチンだけに、まずは6月の“国産初のワクチン”誕生に期待したいところです。
Comments