悪夢をなぜ見るか、解説します #不眠症#睡眠薬 #眠りが浅くなる原因

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01:35 睡眠の周期
03:03 そもそも夢とは
04:55 レム睡眠が増える時
08:19 まとめ

今日は「悪夢はなぜ見るのか?」をテーマにお話しします。

患者さんは「この薬に変えたらすごく悪夢を見るようになりました」とか「最近、調子が悪くて悪夢ばかり見るんです」など悪夢についてよく話します。
初診の方でも「悪夢ばかり見るのですが、これはどういうことでしょうか?」と来院される方もいます。

悪夢を主訴(主な症状)に来院するというと19世紀や20世紀の小説のテーマのような感じがしますし、初期のフロイトの患者さんのイメージも喚起されますね。
実際、悪夢を主訴に来院する方はなかなかいませんが、悪夢に悩んでいる患者さんはたくさんいます。

なぜ悪夢を見るのかはわからないことも多いのですが、現代科学ではどう考えているのかについてお話しします。

結論から言うと、悪夢を見るのは「睡眠が浅いため」です。
特別何かの病気にかかったから、特別何かが起きたから悪夢を見るのではなく、睡眠が浅いからなのです。

■睡眠の周期

図の横軸を時間、縦軸を睡眠の深さとします。

眠り始めてから、ぐっと落ちて上がってを繰り返して目が覚めます。
およそ1時間半~2時間を1周期とし、深いところをノンレム睡眠、浅いところをレム睡眠と言います。
 
レムとはRapid Eye Movementの略で(REM)、眠りが浅い時は眼球も動いており、日中に活動しているときのような活動的な脳波を出しています。この時に夢を見るのだろうとわかってきています。
逆に、深い眠りのときは夢を見ないと言われています。

また、夢として覚えているのは「起きる直前のレム睡眠の時に見た夢」です。
途中のレム睡眠で見た夢はだいたい忘れています。

■そもそも夢とは

そもそも夢とは何かというと、「日中の記憶の編集作業の見学」だと言われています。
寝ている間に記憶として定着させるために、無意識下で日中受けた刺激を編集しています(まとめている)。それを横から自分が見ている感じです。

無意識のやっていることですから夢に参加することはほとんどできませんし、夢をコントロールすることもできません。
ただ見ているだけのことが多いです。

・危険なものほど重要
何を記憶するかというと、危険なことほど重要とされます。
「あそこに行ったら危険な動物がいる」「あそこに崖がある」とか。

「あそこに行くとリンゴがある」「あそこに行くと楽しい」というような良いことは、生きる上で「危険なこと」よりも重要ではないので忘れ去られます。
楽しい思い出よりも辛い思い出を人間の記憶は重視するので、必然的に夢というのは暗いものになりがちです。

レム睡眠が増えると夢の時間が延びるので、必然的に悪夢が増えるということになります。

■レム睡眠が増える時

・日中のストレス、精神疲労
ストレスがあると交感神経優位でカッカしています。その状態で寝るとレム睡眠が延びます。
途中で起きてしまったりすると、その直前の夢を覚えているので「なんだか嫌な夢だったな」となります。
また、日中のストレスが多いということは嫌な情報も多いので、より夢の編集作業は悪い記憶中心に作られます。

・精神疾患
うつ病、躁うつ病、統合失調症、不安障害などの精神疾患がある場合、レム睡眠が増えてるので、結果的に悪い夢を見る確率が上がります。
特殊な例だとPTSDの場合、より鮮明でフラッシュバックにも似た侵入的な恐ろしい夢を見たりします。

・向精神薬の多く
抗うつ薬(SSRI)もそうですが、レム睡眠を延ばします。
少し「上げる」感じの薬はレム睡眠が増えます。ベンゾ系の薬もレム睡眠が増えます。

そういうことがない薬にすれば良いのでは?と思われるかもしれませんが、そうすると今度は鎮静ぎみになり日中に眠くなったりします。患者さんの病像や日中の活動性を見極めながら薬を選んでいます。

例えば休職中の方でうつの酷い方ならば、日中眠くなるかもしれないけれど悪夢を見ない方が良いなということで、過鎮静になる可能性のある薬を使うかもしれませんし、症状が落ち着いていて再発予防の段階で、夜もしっかり眠れている方だったら普通の向精神薬でも良いという決め方をします。

・コーヒー、アルコール
寝る前にコーヒーを飲めば眠りが浅くなります。
アルコールも眠りを浅くします。レム睡眠が延びますし、途中でアルコールが抜けると離脱症状と言って交感神経系優位になります。バッと起きて寝汗をかいているようなときは悪夢を見たりします。
 
・睡眠時無呼吸症候群
いびきをかいて呼吸が一時的に止まる人は、苦しいので眠りが必然的に浅くなりますし、途中で起きてしまうので悪い夢を見ていたりすることが多いです。

■まとめ

悪夢をなぜ見るのかというと、睡眠が浅いからです。
薬を変えることで睡眠の深さを変えることができるので、あまりに悪夢を見る場合は薬の調整でうまくいくこともあるかもしれません。

ただ、一番は日中のストレスや精神疾患(原疾患)が問題だったりします。
悪夢に焦点を当てるのではなく、日中の生活や不安感を解決していくことが、一見遠回りに見えるかもしれないけれど悪夢を減らす一番の治療法になります。

今回は悪夢について解説しました。

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『精神科医がこころの病気を解説するChとは?』
 一般の方向けに、わかりやすく、精神科診療に関するアレコレを幅広く解説しています。動画における、精神分析や哲学用語の使用法はあくまで益田独自のものであり、一般的(専門的)な定義とは異っているところもあります。僕がもっとも説明しやすいとたまたま感じる言葉を選んだだけなので、あまり学術的にとらないでいただけると嬉しいです。
                  早稲田メンタルクリニック 益田裕介

『自己紹介』
益田裕介
防衛医大卒。陸上自衛隊、防衛医大病院、薫風会山田病院などを経て、2018年早稲田で開業。専門は仕事のうつ、大人の発達障害。といいつつ、「なんでも診る」ちょっと変人よりの町医者です。
趣味は少年ジャンプとお笑い。キャンプやスキーに行きたいです。
2020年6月5日より断酒継続中。

【参考】
厚労省みんなのメンタルヘルス https://www.mhlw.go.jp/kokoro/
カプラン 臨床精神医学テキスト第3版

#眠りが浅い #悪夢を見る

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